エレーナ再びそれぞれの想い
 次の日、驚くべき事態が起こったのだ。
「天上界がやばいんだって。このままじゃ天使達は皆死んじゃうって」
クラスの一部の生徒達が噂している。
「何でも、天上界には巨大樹っていう植物があって、それが天使達の力の源なんだって。
でもその巨大樹っていうのが、枯れそうなんだって」
「それって水や養分をあげれば生き返るんじゃないの?」
「それが違うのよ。聞いて驚かないで。
巨大樹の養分は、人間の清らかな心から発せられるエネルギーなんだって。
でも、世の中が荒れて清らかな心を持った人がなかなか見つからないんだって
このままだと、巨大樹は養分を得られず枯れ、天上界は滅ぶんだって」
「うっそー!」
なぜ、クラスメイト達はこんな話を知っているのか?
プリシラやシュウですらまだ知らない。
「今の話、本当ですか?」
突然、会話を耳にしたシュウが、強く反応した。
「そうらしいよ」
「誰がそんな事言ったんですか! エレーナさん?」
プリシラが聞き返した。
「違うよね。私は……」
そう言いかけて、クラスメイトはなつみを指さした。
「なつみさん、これはどういう事? ちゃんと説明して。
それともまた、私達への追い出し作戦? 
貴方、もう意地悪はしないんじゃなかったの?」
プリシラがなつみを睨みつけた。
「ひとぎきの悪い事言わないで。私は、たまたま聞いた話を親切で教えてあげているだけのに。
昨日、エレーナさんと、知らない天使が話しているのをたまたま聞いちゃったのよ」
「エレーナさんと会話していた天使ったら、宮原さやかさんだ」
シュウは心当たりがあるのは、さやかしかいないと思った。
「ってもしかして、ふたりとも何も知らなかったの?
白川君はともかく、あんたは天上界の天使でしょ?」
プリシラからしてみれば、全くの寝耳に水、しかも自らの生死にかかわる深刻な問題だ。
しかもそれを、天上界の天使からではなく、あの柚原なつみから聞かされるとは夢にも思わなかった。
プリシラは愕然とし、ひどく動揺した。 
「あの、プリシラさん……」
シュウはプリシラをどう気遣っていいのか分からない。
動揺しているのは、シュウだって同じだ。
エレーナやプリシラが死ぬかもしれないのだ。
 シュウやなつみの会話をそばで聞いて、ひどく動揺している者達が、実は他にもいた。
黒川忍とシオミ・クレハ・グランチェスタだ。
黒川もまた、天使との契約者であった。
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