エレーナ再びそれぞれの想い
 学生寮、シュウの部屋、
「どうして、隠していたんですか!」
プリシラはエレーナを問い詰めた。
「それじゃ、エレーナさん、プリシラさんにこの事言っていなかったの?」
さやかは驚いた。
エレーナは、静かにうなずいた。
そして、うつむいたまま、それ以上何もしゃべらない。
「私達は死ぬんですか? どうして黙ったままなんですか、答えて下さい!」
死の恐怖におびえたプリシラは、エレーナの肩を激しく揺さぶった。
「言わなかったんじゃない。
エレーナさんは、きっと言えなかったんだと思います。
多分、言い出せなかった訳があると思います。そうですよね? エレーナさん」
シュウがプリシラをなだめた。
エレーナはうなずくと、話し始めた。
「天使は力の弱い者から死にます。
私は中間クラスなので、ある程度力がためられるので、しばらく生きながらえるけど、一般クラスのプリシラさんは、そうはいかないんです。 
プリシラさんは、まだ生まれて2~3年しかたっていません。
貴方は希望や可能性に満ち溢れています。それを、奪ってしまうなんて私には
出来なかったです。今まで黙っていてご免なさい。
私、貴方の指導監督をするためについているのに、監督者失格ですね」
エレーナは自分を責めた。
「最近、願い事がエラーしたり、叶うまで時間がかかるようになったのはそのせいだったんですね」
プリシラは、願い事が叶いにくくなった本当の訳を、この時初めて知ったのだった。
「エレーナさん、ひとりで問題を抱えこまないで、僕にも言って下さい。
僕に出来る事なんて、何も無いかもしてないけど、でも僕だって、エレーナさんの力になりたいんです」
シュウの言葉にエレーナは、涙ぐんだ。
「プリシラさん、まだ天上界が滅びると決まった訳ではないわ。
まだ、時間はある。私達が頑張れば、可能性はあるよ」
さやかが、プリシラを励まし続けた。
「でも、清らかな心を持った人間はなかなか見つからないんでしょ? もし、だめだったら……」
プリシラは、エレーナ達が清き人間を見つけられず、苦戦を強いられているのを知っていた。
「最近判った事だけど、一般クラスの天使は、むやみに力を使わず、大人しく
していれば、ある程度、生き長らえることが出来るそうよ」
さやかが天上界で調べた情報にプリシラは少し落ち着きを取り戻した。
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