エレーナ再びそれぞれの想い

　天上界の危機を知った、シオミ・クレハ・グランチェスタは、人間界からも、
天上界からも遠く離れた世界へ向かった。
そこには、新天上界と言われるもうひとつの天上界ある。
上級クラスのマリアンヌ・AK・チルステアという天使が、新天上界の指導者として、その地を治める。
「マリアンヌさん、イザベラ・エレガンス幹部の天上界が大変だそうです。
人間界の荒廃で、清き心を持つ人が減って、巨大樹が枯れそうなんだそうです。
このままでは、あっちの天上界は滅んでしまいます」
「姉さんの天上界が大変？」
マリアンヌは多少動揺はした。だが、
「私達に出来る事は何もない」
と突き放した。
「貴方も、知っているでしょ。天上界は天使を助けた青年を見殺しにした事を。
古い天上界、私達と方針が違う」
マリアンヌは、全く相手にしない。

　かつて、マリアンヌは、死にかけた青年を救うか否かで天上界と対立し、マリアンヌを支持する一部の天使達と共に天上界を離れていた。
そして、この地に新天上界を設立した。
その時、天上界から持ってきた巨大樹の若い苗木は、天上界の巨大樹ほどでは
なかったが、それなりに成長、新天上界を支える礎となっていた。
天使の数も増え、それなりの実力を誇る。
　マリアンヌはイザべラ・エレガンス幹部の後輩である。
エレガンス幹部は、マリアンヌを妹のように大変可愛がっていた。
マリアンヌは、大変優秀で将来を有望視され、エレガンス幹部の信頼が厚く、
天上界では、いずれは幹部職になるだろうとまで言われていた。
マリアンヌは、新人の頃からエレガンス幹部が育てた。
マリアンヌもまた、エレガンス幹部を姉のように慕っていた。
それが、天上界の規則によって引き裂かれたのだ。