エレーナ再びそれぞれの想い
 それは、第二次世界大戦中にまで遡る。当時マリアンヌは、日本にいた。
「おい、あそこにいるぞ。追え!」
マリアンヌは不審な外国人と疑われ警察当局から追われるはめになった。
「こっちだ」
突然、見知らぬ青年がマリアンヌの手を引き、建物の間に連れ込んで匿った。
「しばらくここに隠れていれば見つからない」
かばってくれた日本人の青年と逃避行した。
「いたぞ、撃て!」
「まずい、見つかった!」
青年は、マリアンヌの前に立ちはだかり、警官に撃たれた。
マリアンヌは、瀕死の重傷を負った青年を天上界へ運び、助けを求めた。
「お願いです。この人を助けて下さい」
ところが、天上界の幹部達は、
「人の寿命をむやみに延ば人間し、人間界の歴史を変えてはいけません」
「でもこの青年は、見ず知らずの私をかばって撃たれたんです」
「天上界の規則は貴方もよく知っているでしょう」
非情にも天上界の規則が強く立ちはだかった。
「僕のことはもういい。それよりも、人間界で天使が傷付けられないようにしてほしい」
自ら死にかけても、人間界で働く天使達の身を案じた青年。
マリアンヌの嘆願もむなしく、青年は力尽きた。
マリアンヌは、それをきっかけに幹部達と対立。
「どうしても、天上界を出て行くというのですか?」
「自分の命にかえてまで、天使を助けてくれた人を救えないなんて、誰のため
の天上界ですか? これ、持っていきます」
マリアンヌは、巨大樹の苗木を奪い、一部の天使達と天上界を離れ、そして新天上界を造ったのだ。
エレガンス幹部は大変嘆いた。
 
 あれから、142年も過ぎた。
シオミは巨大樹の状況の説明を続ける。
「巨大樹のエネルギーの源は、人間の清き心。それは、天上界の巨大樹と同じです。
新天上界の巨大樹は、若いから生命力があるかもしれません。
しかし、天上界に比べ、いくら人間界から遠く離れているといっても、いずれ新天上界にも影響が出てくるでしょう。
ここは、イザベラ・エレガンス幹部の天上界と協力して難局を乗り越えるべきじゃないでしょうか」
シオミは、マリアンヌに進言した。
エレガンス幹部の天上界から助けを求められた訳じゃないし、何を今更とマリアンヌは思った。
マリアンヌは、シオミの進言を受け入れなかった。
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