エレーナ再びそれぞれの想い
 そこには、見た事もないような巨大な老木が大きな枝を広げて立っていた。
そして、その周囲にも同じ種類の見事な大きな木々が老木に付き従うかのように立ち並び、木々というより、まるで森の様だ。
「また、枝が枯れている。この枝も、あの枝も」
エレガンス幹部は、新たに枯れている枝を次々に見つけた。
それを幹につけたまま少し手元に引き、手に取った枝をシュウに見せた。
「これを見て。どの葉っぱも黒ずんでいるでしょ」
そして、シュウもそれを手にした。
「これはひどい。原因はやっぱり人間界ですか?」
エレガンス幹部はうなずく。
天上界が無くなれば、エレーナ達も皆失う事になる。
シュウは、そんな事絶対に受け入れられない。
「エレーナさん達を失うなんて、絶対に嫌です! 何とかならないんですか?
そう言えば、エレーナさんもさやかさんも見かけません。
ふたりとも何処へ行ったんですか?」
すると、エレガンス幹部はこんな事を言い始めた。
「エレーナ達は今、新天上界のマリアンヌ・AK・チルステアの元へ行き、交渉しています」
新天上界。シュウにとっては初耳、何の事だか、話しの筋がさっぱり分からない。
「新天上界って?」
シュウは聞き返した。
今天上界が置かれている状況、そして142年前の天上界の規則をめぐる対立による二つに分かれた天上界……
その規則とは、死にかけている人の寿命を延ばすと、人間社会の歴史が変わる恐れがあるので、天上界の規則により禁止されている事。
規則のためとはいえ、マリアンヌをかばって負傷した青年を助けられず、それが引き金となり、天上界が二分したことなど、エレガンス幹部は、全て語った。
「この木はどれも、人間の清らかな心から生きるためのエネルギーが得られないばかりか、どれも高齢。
私達は、万が一巨大樹が枯れた時のため、普段から種や若い苗木も育ててきました。
御覧なさい。中央に位置する一番大きいのが最高齢です。
周囲にある木々は、私達が、巨大樹の生命力を絶やさぬよう、後から植え続けてきたものです。
本来であれば、これらはまだ々生き続けられたはずです。
だが、人間界の荒廃が、人々から清らかな心を奪い、急速に巨大樹の寿命を縮めてしまいました。
でも、まだ可能性は棄てた訳ではありません」
エレガンス幹部は、さらにこう続けた。
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