エレーナ再びそれぞれの想い
私達がやっている事は、すごく重大な任務。
軽い気持ちで出来ることじゃないのよ」
さやかは、シュウを注意した。
「軽い気持ちで言っている訳じゃありません!」
シュウには考えがあった。
「新天上界のマリアンヌさんは大切な人を失ったと聞いています。
僕も、災害で二度も家族を失いました。
大切な人を失った僕なら、マリアンヌさんを説得出来るような気がします」
されど、幹部達はシュウの必死の訴えにも、相変わらず慎重な姿勢を崩さない。
「幽霊を使って交渉というのは、ふざけすぎているのではありませんか?」
「幽霊の言葉などに耳を傾けないでしょうね。
かえって、相手の態度を硬化させてしまうのでは?」
幹部達の懸念ももっともなのだ。
それに、三度もしつこく交渉を求め、エレーナ達はすっかりマリアンヌから嫌われていたというのもあった。
その時、
「やってみなさい」
エレガンス幹部が決断した。
「しかしエレガンス幹部、いくら何でもそれは無茶です」
他の幹部が止めた。
「無理は承知です。同じやり方でだめなら他の方法を考えるしかありません。
今は、シュウに頼るしかないのではありませんか? 
それとも皆さん、他に妙案でもありますか?」
エレガンス幹部の言葉に、他の幹部達は、納得出来ない部分はあった。
だが、幹部達も既に出来る事は全てやり尽くし、異論など出せなかった。
「私は、シュウを信じてみようと思います。これには天上界の命運がかかっています。
シュウ、貴方が良い交渉をされる事を私は、期待します」
「エレガンス幹部、ありがとうございます」
シュウは、エレガンス幹部に礼を言った。そして他の幹部達にも深々と頭を下げた。
幹部達は渋々と、シュウに交渉役を任せる事を認めた。
「あの、最後にもう一つだけ、お願いがあります。
巨大樹の枯れ枝と、黒ずんでいる物を数本下さい」
シュウはエレガンス幹部にそう願った。実に奇妙な願いだ。
「それは構いませんけど、何に使うのですか?」
「これを見せれば、マリアンヌさんもきっと、分かってくれると思うんです。
僕は、自分が交渉役として、幹部達から支持されていないのはよく理解しています。
僕が幽霊である事への皆さんの懸念も。
何度もしつこく交渉を迫れば相手に嫌われるだけ。
だから今度こそ、絶対失敗は許されないという事も。
交渉がまとまるまで、僕は帰らないつもりです」
< 137 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop