エレーナ再びそれぞれの想い
「はい、ありがとうございます」
シュウとエレーナ達は、互いに手を取り合って喜んだ。
突然、マリアンヌがこんな問答をエレーナ達に投げかけて来た。
「もし今、目の前で人が死にかけていたら? 
でも、天上界の力を使えば簡単に救える。そんな時、どうする?」
「それは、天上界の規則により救えないと思います。
理由は、人間の寿命をむやみに変えれば、人類の歴史まで変えてしまうからです」
エレーナは、答えた。
「では、その人がすごく清らかな心を持った人だったとしたら?」
「それは……」
エレーナ達は回答に困った。
「その人は天上界存続に、どうしても必要な人材。
それでも、あえて規則にこだわりその人を見殺し、天上界が滅びるのを黙って見ているか、それとも、天上界存続のため、規則を変えてでもその人を救うか?」
マリアンヌは、少し間を置いてからこう言った。
「これは、天上界に対する私からの問いよ。幹部達に必ず伝えて」
そして、マリアンヌは静かにこうも言った。
「あの青年は、大変清らかな心を持っていた。私は、あの人と契約したかった。
良い契約者に恵まれた貴方達が羨ましい」
シュウとエレーナ達は、巨大樹の苗木と種を届けるために、天上界へと飛び立った。
マリアンヌとシオミは、エレーナ達を見送っていた。
「今の天上界なら、おそらく規則を変えてでも、存続の道を探るでしょうね」
マリアンヌはこの時、そうつぶやいた。
シオミは、交渉が成立した事に満足していた。
そして、思い切った決断を下したマリアンヌを、新天上界の指導者として誇りに思った。

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