エレーナ再びそれぞれの想い
 巨大樹から得られるエネルギーは限られている。もう残り少ない。
エレガンス幹部は、巨大樹から発せられるエネルギーを別な所に保存出来ないかと考えた。
なぜなら、巨大樹から発せられるエネルギーは、必要に応じて調整出来る訳ではなく、一定状態。
つまり、大した力が必要でない時は、無駄に垂れ流しなのだ。
エネルギーが潤沢にあるうちは、それでも問題はなかった。
一定と言えども、巨大樹から発せられるエネルギーが大きく低下したうえでの一定状態。
今の天上界にこんな無駄を続けられるほどの余裕はない。
そこで、天使達に力を蓄えさせるべきと、ある幹部が提案し始めた。
とは言っても、力が著しく低下した巨大樹から、何万人、あるいはもっといる
全ての天使達に力を供給するのは不可能。
「力をもらえるのは、一部の天使達に限られてきます。
その対象者をどういう基準で決めるんですか?」
「あまりにも、不平等じゃありませんか。もらえない者達が反発しますよ」
他の幹部達からの厳しい指摘が出たのは当然だ。
「まず、宮原さやかと、サラ・シンフォニーに力を与え、一般クラスから中間
クラスへ昇格させます。
あのふたりは、自分達の中に残る、清き人間の心のエネルギーを巨大樹に与え
るという大仕事をします。
一般クラスのままでは、力不足のため、生命の危機にさらされるかもしれません。
ふたりの安全のため、より力をためられる中間クラスへ格上げが必要です。
本当は、一度に大きな力を使える上級クラスにしたいところですが、一般クラ
スからいきなり二階級も昇級というのは、今のふたりの実力上、無理がありま
すので、今は中間クラスに昇級させるべきです」
エレガンス幹部は、早急にこのふたりに力ためさせるべきと主張。
無駄なエネルギーロスを極力避け、力を効率よくためる。
それは、サラ、さやかの身の安全までも考慮した、エレガンス幹部ならではの
考えに考え抜かれた策なのだ。
だが、幹部達はここでも、懐疑的な意見を出し始めた。
「彼女達が、巨大樹に清き人間の心から発せられる力を与えるために、巨大樹
から力をもらう。
つまり、与えるためにもらうというのは支離滅裂、矛盾していると思いません
か?」
「人間の清き心から発せられるエネルギーは、巨大樹の中で新たな別の力と
なり、私達に提供されます。
エネルギーそのものの種類が全く違います」
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