エレーナ再びそれぞれの想い
 一方、新天上界。こちらの指導者は……
「天上界は今頃どうなっているのでしょうか?」
「気になりますか?」
と、シオミに聞かれ、
「あの者達がまた、巨大樹の苗木や種をよこせと言って、来るかもしれないと思って……」
マリアンヌは、気にならないそぶりを見せ、あくまでも平静を装うが、エレガンス幹部
の天上界が気にならないと言ったらうそになるだろう。
まるでそれを、配下のシオミに見透かされているかのようだ。
マリアンヌは、僅かに残った苗木や種を眺める。
「これは、新天上界の巨大樹の血筋を絶やさないため、我々の物。
もう、天上界へ提供出来る、苗木や種の予備はない。
それともあの人達、今度は、巨大樹をまるごとよこせと言って来るのか……」
マリアンヌは巨大樹を見上げた。
そこへ、配下の別の天使が現れた。
「報告します。天上界は、清らかな人間を獲得出来ず、白川シュウの心を巨大樹に捧げ
るそうです。それから、シュウのクラスメイトにも協力させるそうです。
ただ、その人も実は幽霊だそうで……」
マリアンヌは愕然とした。
「なんて事を。幽霊を、しかもふたりも使うというの!」
配下の天使はさらに報告を続けた。
「それから、宮原さやか、サラ・シンフォニーの心を巨大樹に捧げるそうです」
「どういう事? 宮原さやかは、以前ここに来た天使でしょ? 天使がそこまでするな
んて聞いた事がない!」
マリアンヌは、声を荒らげた。
「聞くところによると、このふたりは、清らかな心を持った人間が、死後稀に天使化し
たもので、元人間のふたりには、人の心が残っているかもしれないから、それを巨大樹
に捧げるという事です」
「そう言えば、聞いたことがあるわ。清らかな心を持つ人間が、死後天使として転生す
る事があるって。
でもそれは、極めて稀な事で、全ては巨大樹の意思によるもの……
そんな元人間をふたりも犠牲にするなんて。あっ、ありえない!」
マリアンヌは、天上界の考える事が分からなくなってきた。
「エレガンス幹部達、それが私の問いに対する天上界の答えなのね」
一連の経緯は、マリアンヌには、窮地に追い込まれた天上界のなりふり構わぬ無謀な策
としか写らなかった。
天上界の天使達やシュウの、自らの意志による考えに考えぬかれた行動だということは
、マリアンヌは知る由もなった。
< 157 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop