エレーナ再びそれぞれの想い
 新天上界で、エレガンス幹部達をはじめ、天上界の行動を暴挙と呆れかえっていたマ
リアンヌ。
「人間が清らかな心を持つのは簡単ではない。
だが、何かを大切に想う強い気持ちさえあれば、人は一時的ではあっても純粋になれる

それは、何だっていい。家族でも、友人、恋人の事でも。
あるいは、自己実現のための直向きな心でもいい。
何かを心の底から大切に思う、その一途な気持ちこそ、清らかなもの。
その気持ちは、時として清らかな心に匹敵するする大きなパワーを出す事がある。
ここに来た天使達はそういうのをまるで知らなかった。
天上界の幹部達は、あの子達に何も教えていないようね」
マリアンヌは、部下達の前で文句を言い続ける。
「だったらいっそうのこと、マリアンヌさんが直々に天上界の新しい世代に教えてあげ
たらいかがでしょうか?」
シオミが提言してきた。
それは、何とかマリアンヌと天上界を仲直りさせたいという一心からの進言でもある。
「どうして私がやらなきゃならないの? 天上界の指導者のやるべき事でしょ。
それに、新しい世代が想いの大切さを知らないのは、幹部達も知っているんじゃないの

マリアンヌは一蹴。それから気持ちを落ち着かせると、また過去を思い出しながら話し
始めた。
「第二次世界大戦中日本は、強い愛国心を持ち、行動した。
その方向性こそ間違っていたけど、国を愛し、家族や友人など、身近な人々を大切に想
う気持ちは純粋だった。
やがて敗戦、人々は、戦後の焼け野原の中を必死で立ち上がって来た。
今度こそ、良い国を造ろう、幸せになろうと、懸命に生きる人々のピュアな想いで満ち
溢れた日本は、見事に立ち直った。
想いの大切さは、戦乱の時代から生き抜いてきた天使達なら誰でも知っていた。
天上界も、戦後生まれの世代が増え、今の新しい天使達は、純粋な想いが清らかな心に
匹敵するパワーを出すというのを知らない者が多いのかもしれないわね。
ここに来た天使達、明らかに戦後生まれね」
マリアンヌはまた、考え込んだ。
「人間は、たとえ戦争なんかなくても、大切な物があればピュアになれる事があるはず

でも平和だと、緊迫していない分、その想いが弱いのかもしれない」
実を言うと、天上界の天使達は、地球上のどこでも活動している訳ではなかった。



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