エレーナ再びそれぞれの想い
22 再会
 そんな時である。
中沼が突然警察から呼び出しを受けたのは……
エレーナは何か胸騒ぎがした。
エレーナはひそかに、中沼を追った。警察署に着くと、姿を消して中沼と刑事達とのや
り取りをうかがった。
そして、そのやり取りから、驚くべき事実を聴かされたのだ。
「医療事故? それは、本当ですか!」
中沼は、ひどく取り乱した。席を立ち上がり、前のめりになりながら刑事達を問い詰め
た。
「落ち着いて下さい」
刑事がなだめるが、中沼の興奮が収まる様子はない。
実は、シュウの死に疑念をいだいた郁乃と結衣が、ひそかに警察に捜査を依頼していた
のだった。
そのシュウの育ての親である郁乃と結衣は、土砂崩れで今も行方不明。
代わりに、執事である中沼が警察から結果を聴かされる事になったのだった。
「死因は、不適切な薬物投与による医療事故!」
そう書かれた書類を中沼は刑事から手渡された。
投与された薬の量が多すぎた事により、強い副作用が発生。
シュウは死に至ったのだ。
エレーナは、愕然とし、固まったまま身動きが取れなくなった。
あの日、シュウは独りで大丈夫だからとエレーナ達の付き添いを拒み、病院へ出掛けた

それが、シュウの最期の姿だった。
そして病院から戻って来たシュウは、既に死亡、幽霊になっていたのだった。
しかし、それすらもすぐに気づかなかったエレーナ達。
「あの日、無理にでも付き添っていれば、こんな事にならなかった」
エレーナは自らを責めた。
だが、果たしてそうであろうか?
エレーナが付き添ったところで、本当に医療ミスは防げたと言うのか?
シュウにどのような医療行為が行われているのか、そばで見ているだけで、医師でもな
いエレーナに判るはずがない。
付き添っていればよかった……
原因を知って、後からああすればよかったというのは、いくらでも言いようがある。
エレーナが付き添ったとしても防ぎようがなかったはずの事故。
 
 実はもう二名、姿を消してエレーナと同じようにひそかに刑事達の話を聞いている者
がいる事にエレーナはこの時、気づいていなかった。
「まさか、あのシュウって少年、こんな死に方をしていたとは……」
マリアンヌは衝撃を受けた。
「それで、どうなさるおつもりですか?」
その傍らには、シオミ・クレハ・グランチェスタがいた。
「エレーナはかなり動揺してる。このままじゃまずいわね」
< 161 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop