エレーナ再びそれぞれの想い
 「マリアンヌさん、今から白川貴幸さんのみんな幸せになってほしいという願い、私
達と一緒に叶えませんか?」
それは、エレーナからの思いがけないマリアンヌに対する提案だった。
「そんなの無理よ。白川貴幸は、既に死んでいるし……」
「いいえ、無理ではありません。
白川が亡くなっても、願いはちゃんと私達の中に生き続けています。
今、私達が頑張れば、きちんと受け継がれるのですよ」
エレガンス幹部がマリアンヌに言った。
「でも、もう巨大樹が……」
「確かに巨大樹は、生命力が尽きかけています。でも、まだ僅かに力が残っています。
だから、今のうちに。
白川は、貴方の幸せ、そして人間界の幸せを願いました。
でも、今の貴方を見たら白川貴幸は、きっと悲しむでしょう。
荒廃する人間界、そして、滅びかけた天上界、これが、白川貴幸が臨んだ世界なのでし
ょうか? このままでは、天上界は滅び、新天上界にも波及するでしょう。
いずれ、貴方もこのままでは済まなくなります。
天上界が滅び、貴方が死ねば、白川は、きっと悲しみますよ。
そうならないためにも、今、私達が頑張らなかったら、白川は浮かばれません。
白川の死を決して無駄にしないためにも……」
エレガンス幹部は、マリアンヌにそっとに手を差し伸べた。
「こんな私でもいいの?」
「ええ」
エレガンス幹部は微笑んだ。
差し伸べられたエレガンス幹部の手をしっかりと、握り締めるマリアンヌ。
それは、天上界とマリアンヌが歴史的対立を乗り越え和解、ふたつに分かれた天上界が
、再び一つになった瞬間であった。
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