エレーナ再びそれぞれの想い

　そんなある時、シュウは千鶴に誘われた。
「白川君、今日ちょっとあいてる？」
「えっ？　うん」
「じゃあ今日、私の家に寄っていって。祖父が貴方に会いたがっている」
誘っている割には千鶴の表情は硬い。顔がこわばっている。
「ちょっと待ってて。この格好じゃまずいし着替えてくる。
僕の制服は柚原さん達に取り上げられちゃったし」
シュウは寮に戻り、私服に着替える。
そして、なぜ自分がここに連れられて来たのか分からず、千鶴の自宅に着いたシュウ。
大きな邸宅だ。門も扉がついて立派だ。
「ここが塚本さんの家？」
「さあ、どうぞ」
シュウは千鶴の家に上がった。
「お祖父さん、白川君をお連れしました」
祖父、巌は地方議員で、気難しい雰囲気の人だ。
「どうかね。もう学校にはなれたかな？」
「はい」
シュウは緊張の面持ちで返事をする。
「そうか、それは結構。よかったら、一緒に夕食でもどうかね？」
「はあ」
シュウはひどく緊張していた。この状況から早く抜けたいと思っていた。
「千鶴、ちょっといいか」
巌は千鶴を廊下に呼び出し、何かひそひそ話している。
「白川家の坊ちゃんをもてなすように。よいか、決してそそうのないように」
「はい」と返事をする千鶴。
シュウは、部屋の中からふたりの様子をうかがう。
何やら、ぎこちなさがただようふたりの会話の内容は聞き取れなかったが、シュウは何か威圧的な物を感じ取った。