エレーナ再びそれぞれの想い
 だが、やがて市川まなみの姿が薄くなり、向うが透けて見えるようになった。
それに気づいたエレーナ。
「市川さん、これ以上霊力を使ったら危険です。貴方は十分頑張りました。もう休んで
下さい」
だが、まなみはやめない。
エレーナの制止にもあえて応じようとしない。
「私は、学校が楽しくて仕方がない。シュウ君とエレーナさんのおかげよ。
だから、ふたりに協力するって決めたの」
人間社会が良くなる事、天上界の存続をまなみは強く願い続ける。
「でもこのままでは、貴方が消えてしまいます」
「それでも、私は自分によくしてくれた人達の役に立ちたい。だからやらせて!」
まなみの姿はどんどん薄くなっていく。
「市川さん!」
シュウと、エレーナが叫ぶ。
まなみは静かに消えて行った。
でもまなみは笑っていた。
「シュウ君、エレーナさん、今まで本当にありがとう」
それが、まなみの最期の言葉となった。
「市川さん!」
エレーナが悲鳴を上げその場に膝まづいた。シュウもうつむいた。
協力していたクラスメイト達も次々と涙した。
だが、悲しんでいる時間はない。
エレーナは再びに立ち上がる。真剣な表情にもう涙はない。
「皆さん、清らかな心を持った人が幸せに生きていけるような人間界にするため、
そして、天上界存続のため、今、私達が出来る事を精いっぱいしましょう。
市川さん気持ちに応えるためにも」
皆、もう一度想いを集中させる。
少し、時間が過ぎた。
今度は、シュウの姿が薄くなり始めた。
このままでは、まなみに続きシュウまで消滅してしまう。
「シュウ君、これ以上無理しないで下さい。後は私達で何とかします」
エレーナは、シュウだけは絶対に失いたくない。
「いいえ、僕はやります」
だが、シュウはエレーナの制止を聞かない。
「だめ! これ以上霊力を消耗したら、貴方まで消えちゃいます」
エレーナは、何としてもシュウを思いとどまらせようとと必死だ。
「それに……」
と、エレーナは言いかけた。
「それに、私はまだ、貴方を幸せに出来ていません。
私は天使なのに、天上界の事とかに気を取られていて、ずっとシュウ君に甘えっぱなし
で、まだ何もしてあげられていません。私は、天使失格です」
シュウは微笑んでこう言った。
「そんな事ありません。エレーナさんは、さやかさんやプリシラさんとともに、十分に
やってくれたじゃありませんか。
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