エレーナ再びそれぞれの想い
貴方は、幽霊の僕を誰にでも見えるようにしてくれた。
僕が学校でみんなと仲良くなれたのは、エレーナさんのおかげです。
母さん達が行方不明になった時も、ずっと僕を支えてくれました。
エレーナさん達がそばにいてくれたから、僕は独りじゃありませんでした」
「でも……」
エレーナは、契約者を死なせ、幽霊にまでして苦しめた、自分が許せなかった。
「貴方を死なせてしまったのは私達が油断したから。
あの時は、貴方が拒否しても病院に付き添うべきだった。
それに、土砂崩れで貴方の家族が巻き込まれた時も、私は、天上界の事に気を取られ、
何もしてあげられなかった。
私達はシュウ君を幸せにするどころか、もっと不幸にしてしまった。
シュウ君が最も大変な時、いつも私は貴方のそばにいられなかった」
エレーナは自分を責めた。
「だから、私はまだ、シュウ君を消滅させるわけにはいきません。貴方を幸せにするま
では」
エレーナは、シュウを本当に幸せにするまで消滅させたくなかった。
「エレーナさんは、母さん達が行方不明になって落ち込んでいた僕を、天上界で休ませ
てくれました。
天上界だって危機的な状況なのに、天使達は僕にすごく良くしてくれました。
おかげで僕は立ち直れました。
僕をここまで大切にしてくれた人達のため、そしてエレーナさんのためにも、
自分は何をすべきか分かったのです。だから、やらせて下さい」
シュウの固い決意をエレーナは止められなかった。
そこへ、担任の佐倉先生がやって来て、何やら中沼に話し掛けている。
佐倉先生と会話を終えた中沼は、躊躇いがちに、シュウやエレーナにこう伝えた。
「こんな時に大変言いづらいのですが、先ほど、警察から連絡があり、郁乃様と結衣様
が本家の近くで遺体で発見されたそうです」
このような時にシュウの親が最悪の状況で発見されるとは、現実は何と非情なことか。
エレーナと中沼は、シュウの心が耐えられず、壊れてしまうのではないかと心配した。
だが、シュウは驚くほど冷静に現実を受け入れた。
「そうですか。母さんと祖母ちゃん見つかったのですね」
シュウの育ての親の死がこれではっきりしたのだ。
シュウにとっては、大変不幸な事である。クラスメイト達は同情した。
だが、シュウは以外にもそうは思っていなかった。
「これで安心出来ました。母さん達が見つかって本当によかった」
 
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