エレーナ再びそれぞれの想い
自分が消滅する前に親が見つかり、ようやく気持ちの区切りがついたのだ。 
シュウの姿はどんどん薄くなっていった。
「シュウ君!」
「エレーナさんのおかげで僕は幸せになれたと思います。本当に感謝します。
それに今なら、僕にとってエレーナさんが一番大切な人だって、はっきり言えます。
マリアンヌさんに、なぜエレーナさんのためにそこまでするのかって言われて、ようや
く自分の気持ちに気づいたんです。でも遅すぎですね。
それから、エレーナさん、最後に僕の願いを聞いて下さい」
「えっ」
エレーナは、シュウを見つめた。そしてシュウの口から最後に発せられた言葉は、
「エレーナさんは今度は自分の幸せのために生きて下さいね。
エレーナさんが幸せでいられますように。エレーナさん、大好きです」
そう言うとシュウはニコッと笑った。
契約者に対し、何も出来なかったエレーナの幸せを心から願い、大好き、と言ってくれ
る、そんな人が他にいるだろうか……
シュウとの様々な思い出がエレーナの中を駆け巡った。
シュウと初めて出会った時のこと、夜空の散歩、文化祭、そして、辛かった事、悲しか
った事。
「大好き」というシュウの言葉にエレーナは涙があふれ出た。
シュウはエレーナの涙をそっと拭うと静かに消えた。
今までにない、幸せそうで安らかな表情を残して……
「いやぁーーー」
エレーナは号泣した。
そして、シュウに預けていたエレーナの片方のピアスがコトンと音をたて、地面に落ち
た。
エレーナが天上界存続のため掛けずり回って、シュウから目を放した時に、何度も不幸
が起きた。
二度とシュウを不幸にしないため、いざという時にいつでもシュウの元に駆けつけられ
るようにと預けていた、エレーナの片方のピアス……
それは、あまりにも悲し過ぎる旋律を奏でたのだった。
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