エレーナ再びそれぞれの想い
その時だった。エレーナの天使の杖が眩いまでの光に満ちたのだった。
「杖が……!」

 静けさを取り戻した天上界、わずかに生き残った天使達は深い眠りにつき、巨大樹が
失われた以外、風光明媚な景色は変わらず、天使達が使っていた業務用の施設、居住区
などが残された。
一方、人間界、サラ・シンフォニーのライブ会場では、爆風で吹き飛ばされた人達が目
を覚ました。
自分達は一体何をしていたのかと、互いに確かめ合う。
だが、もうサラはそこにはいなかった。
巨大樹が力尽きた後、サラも消滅していたのだった。
名陵学園由乃高校のグラウンドでも、吹き飛ばされた人々が目を覚ましていた。
エレーナは天使の杖をしっかりと握りしめたまま倒れていた。
「ん、私?」
エレーナが目覚めた。
「あれ? 私、生きている。消えていない」
人々の人間界と天上界の幸せを願う強い想いと、天使の杖に蓄えられた巨大樹の力が、
エレーナを消滅から護ったのだった。
エレーナはその場に座り込んだ。
「御免なさい、グラシアさん。私、天上界を護れませんでした」
地面に転がっていたピアスの片方を両手で丁寧に拾い
、ほほにあてた。
「シュウ君、ごめんなさい……」
そう言うとまた泣いた。
エレーナの翼は少し大きくなっていた。頭にはティアラ、身に付けている装飾品が増え
ていた。
衣装もエレガンス幹部などが身に付けている上級クラスの物へと変化していた。
エレーナは、自ら成長で上級クラスへと昇格していたのだった。
エレーナは大きな喪失感に襲われた。
「もう、シュウ君はいないんだ。そして、エレガンス幹部やさやかさん達も……」
エレーナは、なぜ自分だけ助かったのか分からず戸惑った。
「シュウ君、エレガンス幹部、ジェシーさん、さやかさん、サラさん、プリシラさん、
そして市川さん。みんな消えてしまったのになぜ、わたしだけ?」
エレーナは号泣した。
涙が後から後からこぼれ落ち、止まらなかった。
エレーナはまだ、僅かに生き残った天使達がいることなど知らない。
生き残った天使達も深い眠りにつき、簡単に目を覚ますことはない。
でも、助かったという事は、何か重い使命を課せられたという事。
エレーナはすぐにそう思い直した。
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