エレーナ再びそれぞれの想い
4 ロックオン
 柚原なつみは、どうやってシュウを追いだそうか考えていた。
「あいつがいる限り伝統ある女子高の秩序は守れない。みんな、あいつを追い出す方法を考えて」
なつみは仲間を集めてそう言った。
一ノ瀬真紀が名乗り出た。
「ならば、私にお任せ下さい。この剣を使えば、奴も必ずねを上げるでしょう」
真紀は、剣道、居合切りの達人で、転入したばかりのシュウの、のど元に剣を突き付けた人物だ。
「じゃあ、頼んだわよ」
なつみと仲間たちは固い絆で結ばれていて、一種の上下関係すら見受けられる。
特に真紀は仲間というより、なつみの護衛そのものだ。

 放課後なつみは、シュウを無理やり連れ出そうとした。
「あんた、これから私と一緒に来なさい」
なつみは、シュウの腕を無理やり掴んで引っ張って行こうとした。
だが、シュウを捕まえられない。どうしてもかわされてしまう。
それもそのはず。今のシュウは幽霊だ。
しびれをきらしたなつみがついに、声を荒らげた。
「あんた、この学校に居られなくなってもいいの!」
シュウは、仕方がなく、なつみについて行った。
エレーナ達もシュウを心配して、姿を消してついて行った。
連れて行かれた場所は体育館。
真紀が袴姿で既に待機していた。 
「あんた、最近運動不足でしょ。全然筋肉ないし。いいわ、私が鍛えてあげる。
真紀、こいつを鍛えてあげて」
真紀は静かにうなずくと、そばにあった木刀をシュウの足元に投げた。
「お前も太刀を取って我と勝負せよ!」
シュウめがけて木刀を振り上げ走り出した。
「ご主人様、危ない!」
プリシラが攻撃を防ぐべく結界を張ろうとした。
「プリシラさん、やめて」
エレーナは、プリシラを制止した。
「どうして止めるんですか」
契約者を危険から守るのも天使の役目。
プリシラは、なぜエレーナが制止したのか、理解出来ない。
エレーナは、落ち着いていた。
「シュウ君は幽霊です。木刀はあたりませんよ」
シュウは真紀の木刀をスーッとかわした。エレーナの言った通りだ。
それでも真紀の木刀が、執拗にシュウを襲ういかかる。
シュウはそれをかわし続ける。
シュウの木刀は構えてばかりで動かない。
「よけてばかりでは私には勝てんぞ。これで終わりだ!」
そしてついに一撃をシュウに食らわした。そのはずだった。
真紀はこの時、妙な感覚を覚えた。
確かに剣はシュウに当たったはず。
< 21 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop