エレーナ再びそれぞれの想い
 学生寮に案内されたシュウ。建物は新しく設備も行き届いている。
でも、なぜか人影がまばらだ。
「ここがあなたの部屋よ」
佐倉先生は、シュウに部屋の鍵を渡した。
「でも、ここ女子寮じゃないですか?」
「予算の関係でね、男子寮はないの。それに男子は貴方だけだし。でも、個室だし問題ないでしょ」
シュウは食堂で、どう見ても生徒とは思えない人を見かけた。
それに、さっきから人が少ないことが気になっていたシュウ。
「どうして寮生が少ないんですか? それにあの人は?」
「うちの寮、なぜか人気なくて。少しでも家賃収入を得るため一般の人も受け入れているの」
シュウは呆れてものが言えなかった。
「それからここが私の部屋。困ったことがあったら相談してね」
管理人室の札が貼りつけられた101号室は、寮生を指導監督する教師の部屋で、佐倉先生はここに住み込んでいる。
自宅が遠いので寮に住むことになったシュウ。
学生寮で天使達と一緒に生活するわけにもいかず、必要な時だけ世話をしてもらう事になった。
 
 その夜、学生寮のシュウの部屋。
シュウが独り窓の外をぼんやりと眺めている。
「眠れないんですか?」
エレーナが窓の前に静かに降り立った。
「今晩は、白川シュウ君」
「エレーナさん! 学校に来てはだめですよ。それにプリシラさんは?」
シュウが驚いてエレーナを見上げた。
「プリシラさんは、天上界の用事で出かけているので私が代わりに来ました。
いつも、こうして窓の外を眺めているんですか?」
「眠れない時は、いつもこうしているんです。夜風に吹かれていると気持ちが落ち着くんです」
エレーナは、シュウから何か強い波動を感じていた。昼間感じたのと同じ不思議なものを。
「もしよかったら、夜空の散歩でもしませんか?」
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