エレーナ再びそれぞれの想い
9 エレーナの想い
 シュウはしょんぼりとして寮に帰ってきた。
「お帰りなさい、ご主人様、どうかなされたんですか?」
プリシラはいつもと様子の違うシュウにすぐ気がついた。
「いいえ、何でもありません。それより、エレーナさんは?」
「エレーナさんなら、さっき、用事があるとかで天上界に出掛けて行きましたよ」
「そうですか」
プリシラが、こんな事を言い出した。
「そういえば、エレーナさんも様子が変でしたね。何か落ち込んだような感じでしたし」
「エレーナさんに何かあったんですか?」
「それは、私にも分からないです。何も話してくれませんでしたし」
    
 エレーナはショックだった。 
シュウに好きな人がいたとは。シュウは、宮原慎一の生まれ変わり。
ショックの余り、天上界に戻ったエレーナは、イザベラ・エレガンス幹部に泣きついた。
「人は、生まれ変わる時に生前の記憶を失います。それは、前世の生き方に影響されないためです」
エレガンス幹部は、エレーナを慰める。
「でも、私と慎一さんは昔、付き合っていました」
「確かに白川シュウは慎一の生まれ変わりです。しかし、たとえそうであったとしても、今は別人と考えた方が良いでしょう。
厳しい事を言うかもしれませんが、シュウが、他の女性を好きになったとしてもおかしくありません」
エレガンス幹部も昔の慎一エレーナの関係を良く知っていた。
シュウは、エレーナにとって特別な存在。
エレーナの辛さを、エレガンス幹部は自身の事のように受け止めた。
「シュウ君の心は、私の元にはありません。私、慎一さんを他の女性に取られたみたいで、辛いです」
そう言って泣きじゃくるエレーナを、エレガンス幹部は慰め続け、最後にこう諭した。
「貴方も分かっているとは思いますが、シュウの気持ちを自分の元につなぎとめるために、慎一の記憶を思い出させようなんて考えてはなりませんよ」
恋人を失ったという強い喪失感が、エレーナを苦しめた。

 さて、名陵学園由乃では……
なつみは、図書委員でもある。
彼女は、いつものように図書室の本を整理していた。
学校の軌跡という本棚には、学校設立時から現在までの、学校行事や集合写真を収録したぶ厚いアルバムが、年代ごとに並んでいる。
中には、本棚から半分はみだした状態で、無理に入れられているものもある。
「またぐちゃぐちゃに入れられている」
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