エレーナ再びそれぞれの想い
ジェーシーはエレーナの前に膝まづき
「ひどい傷だ。こんなにまでされて」
近くには、護身刀を持ったなつみが立っていた。
「お前が、やったのか!」
ジェシーが問いただす。
「だっ、誰よ、あんた?」
なつみはジェーシーを睨みつける。
「私は、ジェシー・クリスタル、天上界の契約管理官だ。
人間と天使の契約内容を管理し、契約に関するトラブルを解決、仲裁をするのが私の仕事だ」
「その契約管理官が何の用?」
ジェシーは、なつみに近づくと、護身刀を取り上げようと手をかけた。
「こんな物で、エレーナを傷つけやがって!」
「放して!」
なつみは必死に抵抗するが、あっ、と悲鳴を上げた時には
ジェシーに突き飛ばされ、激しく地面に叩きつけられた。
倒れた時の衝撃で、なつみの手元から離れた刀が地面に転がった。
なつみは、必死で刀に手を伸ばすが、ジェシーは先にそれを奪った。
そしてさらに、シュウを拳で強く殴った。
「ご主人様にいきなり何をするんですか!」
プリシラがシュウをかばう。
「こんな事になったのは、お前が契約者としてふがいないからだ!」
そして、プリシラに対しても怒りをぶつけた。
「お前もだ! シュウ、プリシラ、ふたりも付いていながら、なぜこんな事になった!」
シュウは殴られた頬を手でさすった。
シュウは、この時、痛いと思った。
だが、シュウは幽霊。肉体が無いのに傷みを感じるわけがない。
正確には、シュウは痛いような気がしたのだ。
「痛いか! エレーナはこの何倍も痛みを感じたんだぞ。気絶するぐらいな!」
ジェシーの怒りは最高潮に達していた。
その凄いけんまくに、なつみはひそかに逃げ出す。
真紀もその後を追った。
「こうなったのは全部僕のせいだ。エレーナさんは僕をかばってこんなふうにされた。
でも僕は、どうしたいいのか……」
シュウはどうしたら良いか分からず、ただオロオロするばかり。
「教えて下さい。エレーナさんのために僕は何をしたらいいですか?」
「本気でエレーナの事を思うのであれば、答えは自ずと見えてくるはずだ。
そんな事、自分で考えろ」
ジェシーは、シュウに突き放すように言うと、その場を立ち去ろうとした。
「お願いします。エレーナさんを助けてあげて下さい」
シュウは、ジェシーの腕にすがりついた。
「そのために、もうひとり付いているんだろ」
ジェシーは、目でプリシラを指し示した。
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