エレーナ再びそれぞれの想い
シュウをいじめていたグループも、真紀を除いて離反者が続出、もはや壊滅状態だ。
エレーナとプリシラは、教師達から特別な許可をもらい、姿を隠さずに学校に入れるようになった。
 
 シュウとエレーナ達は、なつみに積極的に接し、クラスに溶け込ませようとした。
黒川もこれに協力し、積極的になつみと関わろうとする。
そんな彼らの姿を、クラスの連中は当然理解出来ない。
「白川君は、今までずっと柚原さんにいじめられていたし、あの天使は刀で斬られたんでしょ?
何で、あんな風に接する事が出来るの?」
クラスメイト達は噂する。
だが、シュウとエレーナ達、そして黒川はなつみと関わるのをやめない。
「何で私に話しかけるの! 私があんた達に何をしたか分かっているでしょう?」
なつみはかたくなに心を閉ざした。
真紀はそれを、いつもやるせない気持ちで見ていた。
 
 真紀は、シュウとエレーナが襲われた事件の直後、柚原なつみの父親に呼び出されていた。
「なつみが刀を振り回し、学校で暴れたそうだな。
あの護身刀は、なつみを護るようにと君に託した物。
それをなつみに学校に持ち込ませ、他人に傷を負わせ、さらに紛失させるとは、
貴方がついていながら何たる失態だ!」
父親は激怒した。
「申し訳ございません」
真紀は土下座して謝罪する。
「なぜ、止めなかった!」
「それは…… 何度も止めたんですが、なつみさんは私の制止を振り切り……
誠に申し訳ございません」
真紀はひたすら謝るしかなかった。
「まさか、あの事件に君までかかわっていたとは。
君を信用した私が愚かだったようだな」
なつみの父親は、真紀をジロリと見下ろしながら、さらにこう言い放った。
「こうなったら、なつみの護衛をやめてもらうしかないな」
「お待ちください」
真紀は慌てた。
「ここを、母親とともに出て行ってもらう」
「それだけは、勘弁してして下さい。
ここを追い出されたら、私達は生きていけません」
真紀の家は、母子家庭。母親のパート収入だけでは、私立高校の授業料は払えない。
柚原家が、真紀をなつみの護衛として雇い、生活も面倒見てきたから何とか学校へ行けていた。
柚原家を追い出されたら、真紀とその母親は、行き場がない。
経済的に苦しいふたりは柚原家を頼るしかなかった。
真紀は危機的な状況に立たされた。

 
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