エレーナ再びそれぞれの想い
だから、いつかはこうなると思っていたし、なつみさんを恨んではいない。
白川が来てから、なつみさんは人が変わられた。
白川を目の敵にするあまり、まるで別人のようになられた。
私はただ、正義感に満ち溢れ、強くて優しい、そんな昔のなつみさんに戻って欲しい」
その言葉は、真紀の悲痛な心の叫びだった。
  
「エレーナさん、それ本当ですか?」 
エレーナから真紀の話を聞かされたシュウをはじめ、一同は、ショックで静まり返った。
  
 食事が終わると、展望台へと向かい、それから下山する。
山頂から展望台までは、それほどの距離ではなく、なだらかな下りが続く。
再び、クラスは列を組み展望台へと向かう。
先に山頂まで登り切った者が、歩くのが早いとみなされ、列の前へ来る。
なつみは、列の前方、シュウ、エレーナ達は、遅かったので後方に並ばされた。
登山道は狭いので、早く歩ける人から先に行かせないと、あとが詰まってしまうからだ。
なつみは、シュウやエレーナ達から離れたくて、急いで山を登った。
下りは、先に山を登ったものから列の先頭に行けるので、帰りはあいつらと一緒に歩かなくて済むと計算し尽くしていた。
この時点ではなつみの思惑通りに事が進んでいるかのように見えた。
だが、展望台へ移動し始めると、なつみの計算は大きく狂い始めた。
だんだん、足取りが重くなり、次第に列の後ろの方に流されてきた。
「まずい。このままでは、またあいつらと一緒になってしまう」
なつみは焦った。だが、足は思うように進まない。
山頂までそうとう無理して登ったなつみは、疲労が限界まできていた。
途中、何度もつまずき、どうにか展望台まで辿り着いた。
展望台で記念撮影ののち、山を下りる。
皆、疲れているので足取りは重い。徐々に温泉街に到着し始めた。
やがて、シュウ、エレーナ達も温泉街に辿り着いた。
「あれ、なつみさんは?」
シュウが、なつみがいない事に気がついた。
「私、先に下山したものだと思っていました」
エレーナは、温泉街の登山道入り口の駐車場に集まってバスを待つ生徒達の中を探した。
「こっちにもいませんでした」
プリシラも見つけられなかった。
黒川と真紀は、なつみの事がだんだん心配になってきた。
「先生、僕捜してきます」
「あっ、ちょっと、白川君!」
佐倉先生の制止を振り切り、シュウは再び山道へ。
「私達も手伝います」
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