エレーナ再びそれぞれの想い
なつみは、もう一度別な岩に右手を掛けようとするが出来ない。
だんだん、左手がしびれてきた。指先から血もにじみ出ている。
「もうだめ……」
ついになつみの左手が岩から離れた。
そのまま谷底へと思ったその時、
「危ない!」
誰かがなつみの腕をつかんだ。
なつみが恐る々目を開けると、シュウがなつみの左腕を持ち上げ飛んでいた。
「あんた、どうしてここへ?」
シュウは、山道の安定した場所になつみを静かに下ろした。
「間に合って良かった。怪我はありませんか?」
シュウはとりあえず、胸をなでおろす。
なつみの服は泥に汚れ、体は擦り傷だらけだ。
「歩けますか?」
心配したシュウが、声を掛けた。なつみはゆっくりと立ち上がり歩こうとした。
「あっ、痛っ」
そのままよろけた。
シュウはとっさになつみを抱きかかえた。
なつみは、さっき転んだ時、足をくじいていた。
「足を痛めていたんですね。なつみさん、この道は危険です。一度安全な展望台まで戻りましょう」
「どうしてわざわざ引き返すの」
なつみは嫌がった。
「この道は隣の山へ行く道なんです。このまま行っても、下の駐車場に辿りつけませんよ」
シュウは、なつみを抱えると展望台へ向けて飛んだ。
「すぐ着きますから少しの間、我慢していて下さい」
シュウは幽霊。だから飛べる。
なつみが何時間もかけて歩いてきた山を、あっという間に展望台まで引き返した。
なつみもう、何も抵抗しなかった。
いつものようにシュウに反発するだけの体力も気力も無かった。
なつみは自らの非力さだけを思い知らされた。
シュウはなつみを展望台で少し休ませた。
「エレーナさん達が、もうじき助けに来るでしょう。それまで少し休みましょう」
展望台でシュウとなつみは、ふたりきりになった。
しばらく空白の時間が過ぎた。
やがて、シュウがこう切り出した。
「ひとつ、質問させて下さい。護身刀についてです」
なつみは、一度シュウの顔を見たものの、すぐに目をそらした。
「中沼さんに頼んで調べてもらったんですが、やはり白川家に代々伝わる物と同じで、一族の護身刀として、白川家からその分家である柚原家に与えられた物です。
それをなぜ、貴方が持っていたんですか?
なつみさんは、もしかして分家の方だったんですか……」
なつみは、うつむいたまま何もしゃべらない。
だんだん、左手がしびれてきた。指先から血もにじみ出ている。
「もうだめ……」
ついになつみの左手が岩から離れた。
そのまま谷底へと思ったその時、
「危ない!」
誰かがなつみの腕をつかんだ。
なつみが恐る々目を開けると、シュウがなつみの左腕を持ち上げ飛んでいた。
「あんた、どうしてここへ?」
シュウは、山道の安定した場所になつみを静かに下ろした。
「間に合って良かった。怪我はありませんか?」
シュウはとりあえず、胸をなでおろす。
なつみの服は泥に汚れ、体は擦り傷だらけだ。
「歩けますか?」
心配したシュウが、声を掛けた。なつみはゆっくりと立ち上がり歩こうとした。
「あっ、痛っ」
そのままよろけた。
シュウはとっさになつみを抱きかかえた。
なつみは、さっき転んだ時、足をくじいていた。
「足を痛めていたんですね。なつみさん、この道は危険です。一度安全な展望台まで戻りましょう」
「どうしてわざわざ引き返すの」
なつみは嫌がった。
「この道は隣の山へ行く道なんです。このまま行っても、下の駐車場に辿りつけませんよ」
シュウは、なつみを抱えると展望台へ向けて飛んだ。
「すぐ着きますから少しの間、我慢していて下さい」
シュウは幽霊。だから飛べる。
なつみが何時間もかけて歩いてきた山を、あっという間に展望台まで引き返した。
なつみもう、何も抵抗しなかった。
いつものようにシュウに反発するだけの体力も気力も無かった。
なつみは自らの非力さだけを思い知らされた。
シュウはなつみを展望台で少し休ませた。
「エレーナさん達が、もうじき助けに来るでしょう。それまで少し休みましょう」
展望台でシュウとなつみは、ふたりきりになった。
しばらく空白の時間が過ぎた。
やがて、シュウがこう切り出した。
「ひとつ、質問させて下さい。護身刀についてです」
なつみは、一度シュウの顔を見たものの、すぐに目をそらした。
「中沼さんに頼んで調べてもらったんですが、やはり白川家に代々伝わる物と同じで、一族の護身刀として、白川家からその分家である柚原家に与えられた物です。
それをなぜ、貴方が持っていたんですか?
なつみさんは、もしかして分家の方だったんですか……」
なつみは、うつむいたまま何もしゃべらない。