エレーナ再びそれぞれの想い
貴方の事が忘れられず、何度も柚原家まで行き、外から様子を伺った。
柚原の育ての親とはうまくやっているようだったし、今更返してとは言えなかった。
そんな時だった。聡美の両親が事故死したのは。
親戚だった私は、聡美を引き取り、
なつみだと思って育てることにした」
「お母さん、それって?」
ショックを受ける聡美。
「私は、元気になれたけど、貴方をこんなふうにさせてしまった。
全て私のせいね。今まで本当に御免なさい」
そう言って黒川は、涙した。
病床に伏しながらも娘を心配し続けた母……。
なつみが泣いた。あの強気な柚原なつみが初めて皆の前で涙を流した。
「なつみ、大きくなりましたね」 
黒川は、なつみをしっかりと抱いた。
黒川の胸の中で号泣するなつみ。
「お母さん……」
それは、初めて黒川の事を母と呼んだ瞬間だった。
そして、黒川は聡美も抱き寄せ、ふたりの娘を両腕でしっかりと抱いた。
そして、3人で泣き続けた。
その光景に、シュウ、エレーナ、真紀など、その場に居合わせた皆も泣いた。
やがてなつみは、黒川の腕からはなれると、シュウをはじめ、クラスメイト達と向き合った。
そして……
「みんな、今までひどい事ばかりして、本当に御免なさい」
なつみは初めて、自分から謝った。
なつみと、シュウ、天使達、そして黒川。複雑にからまったさまざまな問題はひと通り解決した。

 その数日後の事だ。
「ちょっといい?」
シュウは教室でなつみに呼び止められた。
「真紀、あれを持って来て」
なつみは、真紀に持ってこさせた衣類をまるめた物を受け取ると、
「これ」
と言ってシュウに投げつけた。
シュウがそれを受け取って開いてみると、
「これは、僕の制服!」
「あんたの制服、これで返したからね」
そしてなつみは、ため息をつくようにこう言った。
「あんたは何をされてもこの学校を出て行かなかった。
そのタフな精神力は認めてあげるわ。
ホント、あんたのせいでこの学校はめちゃくちゃよ。
言っとくけど、うちは女子高なんだからね」
「はい!」
シュウは初めてなつみに認められ、嬉しそうに返事をした。
「なっ、何なの、この余裕!?」
シュウの自信に満ちた表情になつみは顔を真っ赤にして、
「私、やっぱりあんたは嫌い!」
と、言い放った。

 「エレーナさん、それでね、ようやくなつみさんが僕を認めてくれたんです。
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