時空連鎖のクロノス
相変わらず、俺はへたりこんでいた。
先生も疲れたのか、その場にへたり込んだ。
突然、乾いた拍手の音が響く。
「やぁやぁ、ご苦労様。なかなかにおもしろかったよ」
黒野澄香はへらーと笑う。
「おまっ…」
「まぁまぁ、そう怒らないでくれるかなぁ?今までのお礼に、未来を変えてあげるからさぁ」
「あなた、何をっ…」
先生が黒野澄香を睨む。
「観測者ごときが口をはさまないでくれるかなぁ?」
何が起きたのかわからない。
「そうだな…それじゃぁ、一回だけ意識を過去に送れるようにしてあげるよ」
黒野澄香はやはり口だけで笑う。
「これから提供する未来に不満があったら、変えるといいさ。ただし、一回だけで時間制限付きだけれどもね」
「あなたは…、何がしたいのよ」
先生が静かにきく。
「なぁんにも?そうだな…強いて言うならば、暇つぶし、かな?今回は鍵があるんだ。キミもここでの事は覚えていられるハズだよ、先生。あははっ」
へたり込んでいる俺と疲れ切っている先生。
俺は何も言えなかった。ただただ、雪と良樹の死体を見ていた。
黒野澄香の笑い声だけが響く。
そしてそれは唐突に止まった。
俺は咄嗟に黒野澄香を見た。
背筋が凍る。
悪寒が走る。
からだが麻痺したみたいに動かない。
息ができない。
黒野澄香は笑っていた。
それは、まるで狐のように笑っていた。
まるで、狐のお面のとめがあったかのような恐怖があった。