コイスルキモチ
「セ…セーフっ…」
校門を通り過ぎ、前かがみになってひざに手をつく。
そして息を整える。
陸上部だったというのに情けない…。
「あっぶねー!遅刻寸前ギリギリセーフ!」
誰かの声がした。
あたしが姿勢を戻すとき、ゴンッという音がした。
「いっ!!」
短く声を上げ、頭を抱える。
じ、地味に痛い…。
「ちょっと!」
あたしは怒って声を上げる。
すると、さっき来たであろうその人はこっちを振り向いた。
「…………」
言葉が出ない。
ガラス玉みたいに透き通った瞳。
風で揺れる栗色の髪。
整った顔。
その人から目が離せなかった。