【中編】ビケトリシリーズ【エターナル・フレンズ】 ~出逢いと始まり~
「佐々木。気がついたか?すげぇうなされていたぞ。…大丈夫か?その…。」

言いよどむ安原の雰囲気で言いたいことが分かった。俺の母さんの記憶の事だろう。

「…大丈夫だ。それに……完全に忘れてはいないみたいだし。」

「そうなのか。で、お前の心は晴れたのか?これでよかったと思うか?」

安原の言葉に胸がズキンと痛んだ。

だけど…自分の選んだ道に後悔はしたく無かった。

「俺には最初から母さんなんていなかった。
俺を捨てた女の記憶なんて…いらないんだ。」

「…そうか。それが佐々木の望んだ事ならそれで良いよ。
少しは苦しみから解放されたなら暁も本望だろうから。」

そう言ってギュッと俺の手を握る安原の手から伝わる体温が、どこか不安定になっている自分の心を支えてくれているような気がした。


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