【中編】ビケトリシリーズ【エターナル・フレンズ】 ~出逢いと始まり~
「でも…元に戻す事は出来ないよ。
僕はもうこの能力(ちから)を失うから…。」

元には戻せない。

二度と母さんの声を思い出す事もあの香りを、温もりを思い出す事も無い。

それでも俺は…この苦しみから解放される。

高端の手を取ればそれが叶うのなら嘘みたいな話でもいい。

信じてこの手に縋りたいと思った。

「忘れたいんだ…。
優しい声も、抱きしめられた温かさも、母さんの香りも…。
全部全部記憶から消してしまいたいんだ。」

「後悔は…しない?
とても大切な記憶だよ?
もう戻らないかもしれないよ?」

高端は念を押すように聞いたが俺の決心はもう固まっていた。

< 84 / 144 >

この作品をシェア

pagetop