スイーツな関係
がっかりしながら閉じた携帯電話をバッグの中に放り込み、何気なく顔を上げた時、パリッとモカ色のピンストライプスーツを着ている父親の姿が目に入った。


ウエイターに案内され、私から数メートル離れた窓際の席に座った。


ひとり……?


スーツ姿は見慣れているけれど、今日はどことなく雰囲気が違う気がする。


まさか……デート?


お父様は入口の方ばかり目を向けており、私には気づいていない。
もしもデートだとしたら、娘と鉢合わせなどしたくないはず。


ソファに深く座り直し、雑誌で顔を隠すようにしたけど目だけは父親に向いている。


秘密を知るみたいで、少し胸がドキドキしてくる。
これで仕事相手の男性が来たらこのドキドキ感は笑える。


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