スイーツな関係
カフェに着くと、店内に八木社長の姿はまだなかったが、席をついた途端に、ドアにつけられたベルがカランと音をたてた。


黒のトレンチコート姿の八木社長が足取りも軽く、颯爽とテーブルへ近づいてきた。


「お待たせしてしまいましたか」


私の顔を見ると、礼儀正しく聞いてくれる。


「いいえ。私も今来たばかりですし、約束のお時間にはまだ5分ほどありますから」
「ああ。道路が混んでいたので遅刻をしてしまったのかと思いましたよ」
「この時期は混みますよね」


他愛のない会話で、少し気持ちがリラックスしてきた。


いつもより八木社長は柔らかく感じる。


トレンチコートを脱ぎ、隣の席にそれを掛けると八木社長は座り、まず私の右手に目を留めた。


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