スイーツな関係
「いらっしゃいませ!」


奈緒さんはドアの方に身体の向きを変えて言った途端、びっくりした顔になった。
その顔を見てから振り向くと、遥人が立っていた。


「谷本……シェフ……?」


奈緒さんが信じられないみたいに小さく呟く。


グレーのカシミアのハーフコートに、濃紺のスーツ姿の遥人は私と目が合うとにっこり笑う。

見慣れた笑みなのに、心臓がトクンと跳ねる。

なんだか恥ずかしくて視線をずらすと、コートの肩に雨粒が付いている。


「車から電話をくれれば行ったのに……」
「いいんだ」


そう答えながらも遥人の目は私の後ろ……少し離れた智紀さんを見ていた。
智紀さんも品定めをするかのように、遥人を見ている。


嫌な空気が漂っているように思うのは私だけ?

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