スイーツな関係
伯母は手の指先まで行き届いた優雅な所作で、父にお酒を注いでから遥人と私のおちょこに注ぐと再び出て行った。
あくまでお客様としての対応だ。
いつもはもっとにこやかに話しはじめるのに。
この雰囲気に口を挟まない方がいいのだろうと察しているのかもしれない。


「谷本君……麗香と結婚すれば土地のひとつやふたつ、苦労せずとも手に入るぞ?」
「お父様!」
「自分の力でやりたいんです」


遥人はきっぱり言い切る。


「本当に私の手はいらないのか?」
「もちろんです。自分の力でやらなければこの先何をやっても成功しないでしょう」


遥人は父を聡明な瞳で見つめている。


「……まっすぐ過ぎて、つまらない男だな。君は……」


半ばあきれたような口調の後、父はおもむろにおちょこを持ち上げた。


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