スイーツな関係
タクシーが遥人のマンション前に到着した。


「遥人、起きて。着いたわ」


遥人の肩を揺さぶる。


酔って熟睡している人間を起こすには相当の力で揺り起こさなければならないけれど、あいにく使える左手だけなので、それほど力が入らない。


でもそれだけで遥人はうっすら目を開け、瞳を覗かせた。
けれど、またすーっと瞼が閉じてしまう。


運転手に部屋の前まで遥人を運んでもらい、たっぷりチップをはずむ。
ドアを閉めて振り返ると、遥人は壁に寄りかかりながら、ゆらゆら揺れている。


「大丈夫?」


なんとか玄関に入り、黒の革靴を脱がせる。


「あ! きゃっ!」


脱がせた途端に、私はバランスを失って遥人と共に床の上に倒れこんでしまう。


「だ、大丈夫? 遥人っ」


そう聞いたけれど、私は遥人をクッションにしている。

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