スイーツな関係

「もう、あんたってそんなに疑り深かったっけ？　考えてもみなさいよ。亜希がいなくなったんだから、あの女はすぐ彼にモーションをかけるはず。彼が拒絶したら、本を持ちだすでしょう。そうなったら、行く先は見えてるわ。普通はそんな恐ろしい女より、あんたを取るって。そしてすべてを失った彼は、亜希の元に戻ってくる。どう？　私の読みは？」
「すべてを失っちゃだめなの！　そうなったら、私が身を引いた意味がなくなるっ！」


激しく首を振った亜希はグラッと身体が揺れた。


「ちょっと！　興奮しないで」


私は呼吸を乱す亜希をソファに横たわらせる。


「亜希はよかれと思ってやったことだけれど、それって本当に隼人さんの為になると思う？　隼人さんとエステルが付き合っていたのは事実だけど、本が出てもそんなの一時的に騒がれるだけで、世間はすぐに忘れるわよ。あんな女に踊らされちゃだめよ。彼クラスの人なら仕事なんて、どこでもやっていける。先日の経済新聞にも、カンクンのホテルを紫藤不動産が買収に成功したってのっていたわよ。すごいじゃない。それほど仕事ができる彼なんだから、あの女なんかに負けやしないわよ。こんなことで潰れる人じゃないと思うよ」


亜希はまだ不安そうな瞳を私に向けている。