君の為に放つボール
中庭の中央に立っている大きな桜の木の下。
君はベンチに座ってたね。
・・・バスケットボールを空に投げながら。
クルクルと回転しながら空に上がって、あなたの手の中にストンと戻る。
綺麗なシュートフォーム。
今までのあたしなら、食い入るように見つめていたと思う。
でも、あたしは目を逸らした。
見たくなかった。
バスケなんて。
もうあたしはできないんだから。
これ以上、ボールをキャッチする音を聞いているのも嫌だった。
病室に戻ろう。
車椅子のハンドルに手を掛けたその時。
「自分、一人なん?」