好きなんて言ってあげない。
そう言って彼は女の子の頭を撫でた。
するとその女の子は嬉しそうに笑って彼を見上げる。
それを見た周りの子達は羨んで、自分にもやってと彼に迫っていた。
「………」
教室の前のドアで騒がしくしている彼らを、あたしは窓際の一番後ろの席から黙って見ていた。
頬杖をついて不機嫌そうな顔をしていたらしいあたし。
前の席にこちらを向いて座っていた友達がびっくり仰天した顔をする。
『何その顔!』
「………」
彼女の名前は大神愛香〈オオガミアイカ〉と言って、ハッキリした顔立ちの美人。
それはそれは綺麗で、学年では一番のマドンナ的存在なんだ。
背もスラリと高いしスタイルも抜群だから、当たり前のように男子からモテる。いや女子からもモテる。
そんな彼女とは同じ中学で、親友といえるただ1人の女の子。
『かわいくない顔になってるよ?てかブサイクになってる』
…こんな風にハッキリと思ったことを言えるイイコなんです。