好きなんて言ってあげない。




もう一度、まぶたを閉じて小さく溜め息を吐いた、その時。




「しゅなー!」




低いけれど爽やかな声が、あたしを呼んだ。




驚いて閉じていた目を見開き、声がしたほうを見る。




そこはさっきまで睨むように見ていた男女の集団の真ん中。




可愛い女の子と男友達に囲まれた、五十嵐新〈イガラシアラタ〉が手を振ってあたしを呼んでいた。




まあ、声の主なんてわざわざ探さなくてもわかったけどね。




そんなことを考えて、なんだか恥ずかしくなった。




「………」




ニコニコ笑っている新を無言で見つめる。




周りにいる人達が少し興味深そうにあたしを見ているから、本日三回目の溜め息をついて席を立った。





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