好きなんて言ってあげない。




『え?なんで謝んの』




気まずそうに謝ったあたしを見て新は不思議そうにしている。




「え、だって新怒ってるし…。あたし来なければよかった?」


『いやいやいやいや』




新は大袈裟に両手をブンブン振っている。




『俺が呼んだんじゃん。来てってお願いしたの俺じゃん』




来てなんて言ってた覚えはないけどね。




確かに呼ばれたのはあたしで、いやいや来たのもあたしだ。




じゃあ新があたしに怒る意味なんてないじゃないか。




今さら考えて答えを出してしまった。




「そっか…」




なぜか安心して視線を上げると、新は少し屈んであたしを覗いた。




あたしはどちらかというと背が低い。クラスの背の順ならいつも前から三番目以内に入る。




それは少し不便だしコンプレックスでもある。




だけど、長身の新があたしのためにこうやって、目線を合わせてくれたりするのが、堪らなく嬉しい。




子供扱いされているだけなのかもしれないけど、それでもあたし以外にはこんな行動を取らない彼が、




“あたしだけの新”のように思えて、仕方がないんだ。




毎回自分って性格悪いなーって嫌になるけど、独占欲というか優越感というものに、逆らえる程あたしは大人ではない。





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