ただ、政治家の愛人疑惑などあまりにも有り触れたネタなので、そう読者も飛びつきそうにない。


 それに世の中、もっと悪いヤツらは大勢いる。


 言い方は悪いのだが、たかが二億程度の金で岩原という政界の寵児が闇へ葬られるわけがない。


 俺もそう思っていた。


 東京駅に着くと、岩原が降りて、


「二日後の午後六時に同じ場所まで迎えに来てくれ。いいな?」


 と言う。


「分かりました。お気を付けて」


 一言そう言って、ドアを閉める。


 岩原が大きな図体を揺らし、単身、新幹線の出入りするホームへと向かった。


 俺もその後ろ姿を見ながら思う。


 あの政治家には敵わないなと。
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