第26章
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 十一月も下旬に差し掛かると、慌しさが増す。


 これから年末まで街が賑わうからだ。


 俺も稀に近くのカフェに出かけたりしていた。


 何せ政治家のお抱え運転手は選挙戦の際、必要ないのだから……。


 岩原はずっと遊説して回っている。


 全国各地を。


 あの男にとって、全国行脚などたやすいのだ。


 テレビでも岩原が各地で演説している様子が随時映る。


 二億円の事務所経費問題などまるで何もなかったかのように。


 問題は宙に浮いたままだった。


 本来なら、選管も限りなくクロに近いグレーの男を立候補させるのはおかしいのだ。


 だが、このままだと曖昧なままで終わりそうである。
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