事務所を訪れると、ちょっと太った感じの男性がいて、


「君が堀原博志君か?」


 と訊いてきた。


「ええ、そうですが」


「ああ。申し遅れてすまない。私が藤井先生の秘書の元村だ」


「初めまして。お世話になります」


 元村が笑みを見せ、その後、表情を引き締めて、


「今、国会が会期中で、先生は予算委員会に出ておられる。後で戻ってこられるから、ご挨拶してくれ」


 と言った。


「分かりました」


「採用の可否は話し合った結果、可となった。君がこれから先生の車を運転することになる。よろしく頼む」


「はい。ありがとうございます」
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