一礼し、事務所内で待機する。


 俺も緊張していた。


 藤井を見たことはほとんどないからだ。


 今、地検に拘留中の岩原の同志だったというだけで。


 新党は壊れてしまい、藤井は無所属議員として活動している。


 午後二時過ぎまで待ち続けていると、藤井がやってきた。


「おう、君が新しい運転手だな」


 豪快な感じの壮年男性だ。


 俺も、


「初めまして。堀原と申します」


 と挨拶した。


「すぐに車出してくれ。今から屋島に行く。住所分かるよな?」


「ええ。お連れいたします」
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