が……。


 それに有権者が岩原と藤井の新党に理解を示すかといえば、そうでもないと思える。


 新党の政策もほとんどが三年前の総選挙の際に、新民党が掲げたマニフェストを若干修正したものとなるようだったからだ。


 そんな紛い物が通用するはずがない。


 第一、国家公務員改革や霞ヶ関の埋蔵金掘り起こし、それに各種事業の仕分けなどをしたとしても、これから先、国が存続していくための金が出てくるわけがなかった。


 川浪の行なった増税がベストな方法だと言える。


 国が続いていくための。


 俺も岩原がいつ形だけの新党結成に目を覚ますのか、じっと見続けるつもりでいた。


 いつも朝方、自宅前に着き、車の後部座席を開けて出迎える。


「おはようございます」


「……ああ、おはよう」

その日、岩原は幾分眠そうな顔をしていた。
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