以前から岩原ほど、この手のことを露骨にやる人間はいなかったからだ。


 正午前まで待ち続けていると、岩原が単身でやってきた。


 待ち構えていた番記者たちを上手く交わしながら……。


 そして後部座席を開けると、俺に、


「堀原、今から品川の東奥銀行本店に向かってくれ。急遽、金を用意する必要がある」


 と言った。


「分かりました」


 頷き、アクセルを踏み込んで、車を出す。


 俺もさすがに危なさを感じていた。


 もしかすれば新民・社自両党にいて、まだ今後のことを決めてない一部の議員たちを買収するため、金が必要なのだろうか……?


 そうなれば裏金である。


 危険な金なのだが、そういったものをやり取りするのも政治家の仕事のうちなのだ。
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