丸一日政治家のお抱え運転手をやっていると、倦怠してしまう。


 だが、明日も変わらず午前九時半から十時前ぐらいまでには岩原の自宅に行き、待機するつもりである。


 後部座席で居眠りしているようだった。


 俺もさすがに激務を行なう人間はきついだろうと思っている。


 そこはこの男に対して、唯一同情できるところだ。


 やはり国会議員、しかも大所帯のグループの舵を取る人間はそう簡単にいかない。


 俺もそう思っていた。


 そして十月も半ば近くになり、東京の街も晴れたり曇ったりで、冷え込んでいる。


 その日の朝も岩原の自宅前に横付けし、待っていると、家から出てきた。


 岩原の家は豪邸だ。


 豪勢な家屋に加え、庭なども付いていて、資産価値は一億円以上あると思う。


 岩原が生活感が全くないのは分かる。
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