年齢相応に白髪も増えたし、心労が絶えないのだろう。


「堀原」


「はい」


 運転中にいきなり呼ばれたので返事する。


「君は俺の今の心境が分かるか?」


「いえ」


「散々マスコミが叩いてるが、あの連中は俺の労苦を知らない。たかが二億程度の金が動いたぐらいで何が悪いんだ?」


「しかし二億というお金は大きいと思いますが」


「君は分からんのか?二億の金など、国政に携わる政治家にとっては小金だ。大した額じゃない」


 こうやって口では二億円は小銭などと言っているが、実際一般人とは全然生活感が違うのだ。


 それに岩原は藤井と合弁し、新党結党を行なうと同時に、全ての疑惑が消えていく可能性が高いと踏んでいるようだった。
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