そばにいたい。





「…まだ、いってなかったな」



しばらく沈黙が続いたあと、ようやく口を開いたのは春馬だった。



無言で春馬を見つめる悠真の目は次の言葉を促していた。




「梨香子は、女の子と男の子が欲しいと言っていたんだ。だけど、拓真を産んだ時に無理をしてね、もう2度と子供が産めなくなったんだ」


春馬はその頃のことを思い出しているのか、顔を歪めていた。

悠真はその様子から母親が危なかったことを知る。


「だから、養子を?」



「あぁ、…あとな、あの子は喘息をもっているんだ。子供の頃に治療が受けれなくてとてもひどいんだそうだ。運動は命取りになるといわれたよ」



ぜんそく…と呟くように繰り返す悠真。




ダメじゃないか。と悠真はおもった。

これではますます拓真が悪者になってしまうとおもった。


拓真はもっと我慢しなければならなくなる。

それなのに玲菜を責めることはできないのだ。



理不尽だ。そう、おもった。
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