そばにいたい。
速水は入ってきた悠真を自分の前にあるイスに座るよう促した。
「…、あの…」
座っても口を開かない速水を見て、悠真は遠慮がちに呼び掛けた。
「…ああ、ごめんね。
あのね、玲菜ちゃんのことなんだけど…、」
そう前置きをした速水は再び黙りこんだが、悠真は急かさず、じっと次の言葉がおとされるのを待った。
「…あの子、お家ではどんな感じなの?」
「イイコですよ、…あまりしゃべらないけど」
「…そう、ありがとう」
"イイコ"
そう言った悠真の顔は驚くべきほど無表情で、なんの感情も読み取ることができない。
「…いえ、しつれいしました」
速水が聞きたいのはこれだけではなかったが、悠真の表情を見る限り、聞いていいこととは思えなかった。
小学生とはいえ色んな感情があるのだろう、と結論づけ、にっこりと笑った。
悠真も、速水の聞きたいことがこれだけではないとは思っていたが、素直に頷き、保健室を出た。