へくせん・けっせる
第六話:お花見が終わるまで

宴会が始まるまで


四月二十二日。

晴れました。

数日前あたりから、桜の花びらは満開に咲き誇っている。

今日は絶好のお花見日和だ!

てことで、私は桜の木々が密集した広い公園に来ていた。

「満開だー!」
「満開だね」
「満開やなー」
「うわーすごーい!」
「綺麗ねー」

総勢五人の感嘆の言葉が、大きい桜の樹の前にすでに取ってあった場所に響いた。

今日は大人数だ。

私と美紗と茜。

そして、私のお隣りさん、秋菜っちとそのお母さんの奥山千春【おくやま ちはる】さん、計五名という仲良しメンバーだ。

「そういえば、深山さんは? 来ないんだっけ?」

ふとメンバーを見て、美紗がそう聞いた。

「いや、ありえへん。あの人がこんなイベント参加せえへん訳あらへんって。たとえ全身複雑骨折したって来るやろな」

茜の中でだいぶ超人化してる深山さんとは、緑風荘の大家さんである。

深山忍【みやま しのぶ】さん、自称二十代の女性だ。

性格は男勝りで、いわゆる姐御肌。

イベントやお祭りが大好きな、そこそこ美人な人。

「来るみたいですけど、少し準備に時間がかかるっていってましたよ」

千春さんが、おっとりとした口調でそう言った。

どうやら忍さんは、また何か企んでいるようだ。

「お母さん、出店みて来ようよー!」

秋菜っちが急かすように、千春さんの白いロングスカートを引っ張った。
長い髪を三つ編みでひとまとめにした、海老のような髪形を揺らしながら、千春さんは頷いた。

「はいはい、じゃあ見てきましょうか。すみません、ちょっと行ってきますね」

「はいよー、後は任せといて下さい!」

答えて私がそう言うと、千春さんは軽く頭を下げてから、先に走り出した秋菜っちの後をゆっくり追って行った。

「さて、早速宴会の準備といこかー!」

「おーっ!」

茜の号令で、私と美紗が持っていたクーラーボックスを隅に置いた。

そして、千春さんのお弁当を真ん中にドカッと置く。

そんで……。

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